331人が本棚に入れています
本棚に追加
驚いたのか、西はピクッと反応を示す。だが、その指を拒むことはなかった。だからもう少しだけ……もう少しだけ、進めてみる。
親指で唇をなぞる。西のそれが、わずかに緊張感をもつ。
こちらを見上げる目は、九年前と何ひとつ変わっていないように思えた。
「……んっ」
斎間は西の唇に自分の唇をやさしく押し当てた。
軽いキスのあと、一度離れる。
西の顔は赤かった。アルコールのせいだけではないだろう。
「話したいんじゃなかったのか」
「うん。話したい……」
今度は激しく、西の唇をむさぼった。舌を相手の舌に絡ませ、ねっとり犯すようになめとる。苦しそうに逃げようとする西の頭を固定し、深く深く、口内を蹂躙した。
シャツをたくし上げようとすると、西が「たんま!」と叫んだ。
「え、ちょっと……」
勃起した自分の下半身。こんな状態で止められるのはきつい。
「話したいんじゃなかったのかよ!」
「なに話したかったんだっけ……」
「バカじゃねえの! それに俺はもう四十だぞ!」
「もしかして性欲ない、とか?」
「そ、そりゃ……ないこともないけど」
「じゃあしよう」
「っちょ、話は!」
抵抗する西の体をくすぐる。
「きゃははははは! っちょ、ヤメロって……!」
体をよじらせ、逃げようとする西をベッドに押し倒し、斎間はさらに相手をくすぐった。西はさしずめ、地上に打ち上げられた魚のようである。
男の笑い声に、こちらまで明るい気持ちになる。さっきまでの沈んだ気持ちはどこへいったのやら。
「いい加減に……!」
言いかけた男の唇に、再度口づけた。何度キスをしても、足りない。同じようにきっと何を話しても、話し足りないと思うのだろう。
だったらーー。
最初のコメントを投稿しよう!