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「紳!」
駆け寄る先には、二つ年上の幼馴染み、中垣紳一が待っている。
高校生になったら、紳と同じ高校に合格出来たら、告白するって決めてた。
だから今日、一緒に帰る約束をした。
紳に向かって、まっしぐらに駆けていた。
紳の陰に隠れて見えなかったけれど、紳の前には女生徒が寄り添っている。
ひょっとして…キス…してた…?
心臓がドキドキする。泣きそうになり、慌てて目を逸らし、踵を返して、逃げるように走り去った。
背中に紳の声が聞こえる。
「宗太!待てって!おい!宗太!」
泣いてるのを見られたくなくて、全速力で走って校門を駆け抜けた。
ブレーキの音と鈍い衝突音の後、悲鳴とざわめき。遠くなる意識。
涙を拭おうとしたけど、体が動かない。アスファルトに流れた温かな赤い色を見て、事故に遭ったんだと気付いた。
死ぬのかな、僕。
やだな。だってまだ、紳に好きだって言ってない。
でも、彼女いたんだ…。
「宗太!」
紳の声が聞こえる。
大好きなんだ。届かない想いは、言葉にも出来ず、僕は目を閉じた。
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