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「本格的に一発殴ってもいいからな、ランバート」
溜息をつくコンラッドは苦労人っぽい顔をする。多分、本当に面倒見のいい苦労人なんだろう。
「俺には兄が二人いる。両方とも独身だよ」
「言われないか?」
「一番上の兄にはお付き合いをしている女性がいるはずだ。多分、もう五年以上だな。兄はいつでも迎え入れるつもりだろうが、相手がまだ尻込みしていると言っていた」
同じ兄弟から見ても、長兄はできた人だ。相手の身分かまわず礼を尽くすし、穏やかな人柄でもある。ただ、仕事となれば厳しい目を持っている。次のヒッテルスバッハを継ぐのは間違いなくこの人だ。
「二番目の兄さんも恋人いるの?」
「いや、いない。二番目は性格に難ありかな。表面的には友好的なんだけど、腹黒いっていうか。親しくなればなるほど隠さないから、余計に女性は引く。多分本人も結婚願望ないんだ」
二番目の兄を思い出すと、本当に腹黒いという言葉がしっくりくる。誰にでもとても友好的で笑顔が多いけれど、その全てが作り物だ。本当は我が儘放題だし、拗ねるとけっこう時間がかかる。病弱だった昔の儚さなんて、今は探したって欠片もない。
「兄弟仲がいいんだな」
「そうか?」
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