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「どうした、ランバート? なんだか浮かない顔をしている」
ゼロスが疑問そうに問いかけてくる。それに、ランバートは曖昧に笑った。
「いや、評価が高すぎると思って。ファウスト様のお気に入りだからとか、陰口を言われていないかと思ってさ」
素直に気持ちを伝えると、全員がキョトンとした顔をする。そして次には、大いに楽しげな笑いが起こった。
「なんだよ」
「いや、ないから平気だ。ファウスト様のお気に入りだとは皆が感じているが、それがいいとは思っていないさ」
「そうだね、むしろ大変だと思ってるはずだよ。ファウスト様の相手は普通じゃできないしな」
なんとも楽しそうな言葉に、ランバートだけが首を傾げる。別に大変だと思った事はないし、むしろ色んな事に首を突っ込んでいるのはランバートの方だ。苦労だと思った事もない。
「ファウスト様に皆が憧れているのは間違いないが、あの人の期待や要望に応えるのが大変なのも分かってる。それに、贔屓目で段位を与えるとも思っていない。これは間違いなく、お前がこれまでしてきたことへの評価だ」
ゼロスの言葉にその場にいる皆が頷いてくれる。ほんの少し引っかかっているものが、スルリと取れた気がした。そして素直に、頷いて笑う事ができた。
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