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素直に礼を言った後で、ランバートも困ったように笑った。腕章に触れる。この意味を考えてしまう。
「正直、俺が隊の指揮を執るなんて、考えられないんです。誰かを従える事なんて、してこなかったので」
「コツが掴めればお前はできるだろう。視野も広いし気遣いもできる。案外いいかもしれないぞ」
「一人で動けるのが一番気持ちが楽でいいんですが」
「いつまでもそうは言っていられない。お前に任せる任務も今後更に重くなるだろう。シウス達もお前の力量は知っているから、余計にな」
期待されることは嬉しいし、それをやれた時には満足感がある。だがそこに仲間や友人の命がかかってくると、動きが取れなくなる。それを負ってこそなのだろうが、今はまだその覚悟がないのが現実だ。
「まぁ、その為に青に残したんだ。少しずつ慣れてゆけばいい。お前は飲み込みも早いし、咄嗟の指示も的確だ。それに、第二師団は大きな隊は作らない。あまり気負わず、今まで通りのびのびとやれ」
そう言って頭を撫でるファウストの柔らかな笑みは、そのまま祝福と取れる。ランバートも顔を上げ、それに素直に頷いた。
「ところで、今日はそのことで? 他に、聞かれたくない話があるのでは?」
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