586人が本棚に入れています
本棚に追加
ランバートは話を切り替えた。この話なら別に呼び出しなどしなくても人前でできるものだ。わざわざ呼び出したなら、あまり聞かれたくない話があるはずだ。
話を振ると案の定、ちょっと困った笑みが返ってくる。そして、なんとも歯切れの悪い感じでファウストは話し出した。
「実は、次の安息日に少し付き合ってもらいたいんだ」
「何かありましたか?」
「贈り物を選びたいんだが、俺はどうも苦手でな。お前なら得意そうだと思って」
そう言ったファウストは少し照れている。確か恋人はいないはずだから、誰に当てて贈る物なんだか。
「誰にですか?」
「妹に贈るんだ。来月の頭が誕生日なんだ」
「それでは、毎年贈っていたでしょ? どうして今更そんなに迷うんです?」
妹が相手なら毎年贈り物をしているはずだ。今更こんなに迷うのはおかしいじゃないか。
なんとなく追求するような気持ちで聞いてしまうと、ファウストはますますばつの悪い顔をする。
「去年までは弟に頼んでいたんだが、流石に毎年で怒られてしまった。妹も今年二十歳なんだから、いい加減自分で選んだ物を贈れといわれて」
「けっこう強いですね、弟さん」
この人を相手に随分しっかりと物を言う弟だ。何か機会があれば是非とも話がしてみたい。
まぁ、この人も弟に弱いんだろう。なんとなくそんな気がする。
最初のコメントを投稿しよう!