【おまけ2】贈り物

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 安息日の午前。ランバートは私服姿のファウストと一緒に西地区にいた。  西地区は貴族が好むような店が多く建ち並ぶ、比較的治安のいい場所だ。おしゃれな服や宝飾品、テーラーなども揃っている。雑貨、カフェも多い。ランバート達が飲みに来る店は、この西地区と東地区の中間あたりにある活気のある酒場が多い。 「妹さんは、何か趣味はあるのですか?」  道すがら聞いてみると、ファウストは少し考えている。自分の妹の事だろうに。 「確か、絵を描くはずだ」 「絵、ですか」 「体が弱いから、運動ができなかったからな。絵ならベッドからでも描けると、小さい時から描いていた」  小さな頃の思い出を語るみたいな穏やかな表情。なんとなくだが、ファウストの中では今でも妹は幼い思いでの中の姿なのかもしれない。そんな事を思わせる表情だった。 「確か、心臓が悪いんでしたね」 「あぁ。今は大人になって体力もついて、日常生活には支障がなくなった。天気のいい日には外で写生をしたりもしているそうだ」     
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