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「そうだ」ということは誰かに聞いたのか。自分で確認をしていない感じがする。いっそ誕生日にこの人を妹さんのところに行かせるのが一番いいプレゼントなんじゃないかと思えてきた。
「去年までは、弟さんが選んでいたんですよね? 何をあげていたんですか?」
「絵画集や、好きな本、新しい画材なんかを贈っていたようだ。でも、二十歳だから少し違ったものがいいと言われてしまって」
「弟さんは何を贈るか言っていましたか?」
「妹の為に香水を調合するそうだ」
「調合?」
「言わなかったか? 弟は調香の仕事をしているんだ」
当然のように言われたが、そんな話は聞いていない。ランバートは驚いてしまう。つまり、香水を作る仕事をしているのだ。
「繊細なんですね、弟さんは」
「お前、今俺を雑だと思っただろ」
ジロッと睨まれるけれど、ランバートはそれを笑って受け流した。そして、目的の店の前に辿り着いて止まった。
目の前にはいかにも高級という入りづらい店がある。店内も明るいわけではなく、ぴっちりとスーツを着た人々が優雅かつ忙しそうに動いている。
その店を前に、ファウストは固まったようだった。
「とりあえず、定番ですからね」
「ここは…」
「女性が好きなキラキラしたお店ですよ」
気後れして動けないファウストの腕を引いていくランバートは、さも当然と店へと入った。
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