【おまけ2】贈り物

12/16
前へ
/131ページ
次へ
「心優しい女性が、森の野獣と恋をするんだ。最初は父親の罪によって野獣の元に来た女性も、野獣のもてなしや優しさに心を開いていく。だが女性の父が病気になり、看病をするために数日戻る事になった。約束の期日までに戻ると言って」  これで、なんとなく分かる。女性はきっと、約束を破ってしまうんだろうと。 「約束の期日を過ぎて慌てて戻ると、野獣は今にも死にそうになっていた。女性が涙ながらに野獣に謝ると、野獣は彼女を許した。そして優しい野獣を、女性が心より愛しいと告げた時に野獣の呪いは解けて美しい王子に変わる。確か、そんな話だ」  うろ覚えなのか、僅かに首を傾げながら静かに話をするファウストは少し照れたように笑う。その表情の柔らかさに、ランバートは少しだけドキリとした。 「これが、いいんじゃないですか? 思いでのある物語なら、きっと妹さんも覚えていますよ」 「そうだな」  頷いて、ランバートは周囲を見回し店員の所へと向かう。なんだか心が騒いで、少し距離を取りたかったのだ。小さな子の子守をするような、穏やかで優しい表情を見ていると、そこに引き込まれそうな気がしてしまったんだ。 「あっ、ついでに入れ物も何か見繕った方がいいかもしれない」  いくらなんでも裸で贈るわけにはいかない。当然ラッピングなどは丁寧にしてくれるが、一緒にケースをつけるとそれだけでインテリアにもなる。それも合わせて話をしようか。     
/131ページ

最初のコメントを投稿しよう!

586人が本棚に入れています
本棚に追加