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突然声がして驚いて変な声が出た。心臓がおかしな速度で鳴っている。前方を睨むと、実に楽しそうなシウスがいた。
「ノックしろ!」
「したが反応がなかったのでな。悩むと視野が狭くなる癖、そろそろ直さねばならぬぞ」
呆れたように溜息をついたシウスが近づいて、手に持っていた書類を側に置く。そしてついでのようにファウストの手元を見た。
「やはり今年は難しいかえ?」
手にした評価書を苦笑して見たシウスが、ファウストの顔を覗き込む。それに、ファウストは素直に頷いた。
ファウストが持っているのはランバートの評価書だった。成績で言えば最高位のAがつく。素行も良く、隊での信頼もある。
加えてこいつは剣の腕は師団長レベルでもおかしくなく、槍や弓も強い。馬術などファウストと並べたって遜色ない。
更に先に起こった事件の解決に、ランバートは深く関わっている。ファウストは特に、個人的にも世話になった。
こうなると困った。あまりに他の一年目との差がある。武で競わせてもこいつが一番になる可能性が大だ。
勿論ランバートには問題も多い。軽微な規則違反で怒られる事が多く、これは明らかなマイナスだ。おそらくこんなに反省文を書く隊員もそうはいないだろう。
だがそれを引いても、プラス面が飛び抜けていた。
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