楽しいおにごっこ(レイバン)

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 音が近い。まだ相手の姿は見えていないけれど、確実に近い。草を分けて睨むと、五十メートルくらい先に目標の人物を見つけた。 「トレヴァー、みーつけた」 「レイバン!!」  悲鳴に近い声を上げて本気で走るトレヴァーが、面白いくらい青い顔で逃げていく。これだからこいつは楽しい。予想以上の反応をしてくれる。  けれどちょっと厄介なのが、こいつの足の速さとスタミナだ。とにかく足も速いし疲れない。だがそれも整備された道での事。ここは足場の悪い森の中だ。  レイバンは獣のように俊敏に走る。全身をバネにして走ると、距離は徐々に縮まる。足場が悪いからだろう。そのうち、木の根に生えた苔に足を取られてトレヴァーがバランスを崩した。 「わっ!」 「おっと!」  ずっこける前にどうにか片腕を掴んで引っ張れた。ギリギリセーフ、怪我もない。そしてそのまま、レイバンはトレヴァーの腕章に触った。 「はい、一人目」 「なんでだよぉ」 「お前の音はでかいんだよ」  種明かしをすると、トレヴァーは理解できない顔をした。 「俺は耳と鼻がとってもいいんだよ。お前は体でかいのに無遠慮に草かき分けて踏みつけて走るだろ。もの凄くわかりやすい」 「どんな耳してんだよ」  がっくり肩を落とすトレヴァーに、レイバンは笑った。  昔から耳は良かった。動物の足音も感じられるくらいだった。そのうち、歩き方の癖や体重で誰の足音か個人を特定できるようになった。実に面白い特技で、気に入っている。 「さーて、次は…」  耳をそばだてると、とても小さな音がする。カサカサッと草に隠れるような音、軽い足音。 「コナン、みっけ」  ニヤリと笑ったレイバンは森の中へと再び踏み出したのだった。
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