585人が本棚に入れています
本棚に追加
/131ページ
安息日に手合わせをしたが、緊張で固まっていてとにかく手合わせになっていなかった。だが、確かに真っ直ぐな情熱は感じた。それに決して動きが悪いわけではない。人間性においては一番いいだろう。
「お前みたいな奴だな、ウルバス」
「あぁ、やっぱりそう思う? 俺も正直他人事とは思えなくてさ。思わず親戚か何かかと思ってあいつに聞いたくらいなんですよ」
のほほんとアホな事を言うウルバスは、意外と師団長連中をまとめるのにいい仕事をしている。皆が個性的だからか、ぶつかる事も多い。だが誰も、ウルバスとぶつかる奴がいない。だからこそクッションとなっているし、取りなしも聞く。武力ばかりが集団に必要な能力ではないのだ。
「何にしても、ランバート達は楽しみですね。これがこのまま繋がっていけば、数年後には僕たちみたいな関係になるかもしれないし」
「それは分からないが、確実に今後の隊を引っ張っていくようにはなるだろうな」
「でもまずは、明日の試合が楽しみではありませんか? ねぇ、ファウスト様」
「あぁ」
師団長達が楽しそうに話すのを聞いて、ファウストも素直に頷く。でもその心中は、ほんの僅かな寂しさが薄らぐことなくとどまったままだった。
最初のコメントを投稿しよう!