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その夜、ファウストはなんとなく修練場にいた。だが剣を持っているわけではない。手持ち無沙汰なまま、なんとなく座っていた。
思うのは、やはり消えない少し寂しいという気持ちだった。ただそれは無視しようと思えばできるレベル。ルーティンが狂って気持ちが悪いという程度の感覚だった。
だがその背後から聞き慣れた足音が近づいてくるにつれて、この気持ちの悪い感覚は薄らいでいった。
「こんな時間に剣も持たずに、何をしているのですか?」
温かな毛布が背中にかけられる。それで、体が冷えている事に気づいた。
「少し、風に当たっていただけだ」
「悩み事ですか?」
「そうじゃない」
当然のように隣に並んだランバートを見て、気持ちが落ち着いていく。表情も穏やかになる。
「楽しいか?」
不意を突かれたように驚くランバートは、次には楽しげに笑う。その顔を見ると少し複雑だ。こんな顔をこいつはしたのかと。
「楽しいですよ。みな、気のいい奴らです」
「そうみたいだな。バランスもいいんだろ?」
「どうでしょう。正直それぞれ主張が激しいので、拗れると面倒だと思います。ただ、ゼロスがまとめる力があるので」
「レイバンとは、いい仲間だろ」
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