第一試合

4/9
前へ
/131ページ
次へ
★トレヴァー  トレヴァーは息巻いていた。初めて活躍らしい活躍ができるかもしれない。それを思うと震えるし、怖いけれどやろうと思う。  このチームの中で活躍していないように思っている。一対一でも上手くやれない。誇れるのは足の速さと体力のみ。そうなると、どうしろっていうんだろう。  だからここで、せめて回ってきた役目だけでもきっちりこなしたい。そう思えば震えが止まった。そして、改めて闘志がわいてきた。 「トレヴァー、右から五人来てるよ」 「わかった」  頭上からコナンが声をかけてくれて、俺は右側を睨む。そうすると五人の人影がジリジリと近づいてきていた。 「トレヴァーじゃん。なに、やっぱり見捨てられた?」  目つきの悪い意地悪な笑みを浮かべた奴がニヤニヤ笑う。その隣にも同じような奴がいる。 「そんなんじゃない」 「じゃあ、なに? もしかして、俺たちに挑もうっての?」  軽く構えた奴はフットワークが軽い。そして静かな奴が二人、この状況を静観している。 「軽くもんでやるよ」 「ほら、早く来いって」  挑発されて、トレヴァーは冷や汗をかきながら乾いた笑みを浮かべた。そして回れ右して、猛然と走り出した。 「あっ! 逃げた!」     
/131ページ

最初のコメントを投稿しよう!

585人が本棚に入れています
本棚に追加