第一試合

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「待て!!」 「待てるかぁぁぁ!」  多分一人一人は体重が軽い。けれど囲まれたらそれでも取られる。逃げるが勝ちだが直ぐに目的地には行けない。奴らに悟られちゃいけない。  脱兎のごとくとはこのことだ。トレヴァーは考えもなくもの凄い勢いで走る。けれど身が軽い奴らは速いし俊敏だ。追いつかれそうになって手を払い、迫るタックルを避け、どうにかこうにか逃げ続ける。森を右へ左へ。こんなに本気で走った事なんてあまりない。  心臓が壊れそうだ。足なんていつもつれたって可笑しくない。脇腹痛い。木の根に引っかけたら前にぶっ飛んでいく。視野が狭くなりそうだ。それでも目的地は見えてきている。不思議とゴールテープが見えてきそうだ。  寸前で掴まれそうになったのを払いのけて、開始地点まで戻ってきた。少し開けた平らなそこを走り抜けて人が隠れていそうな茂みに転がるように走り込んだトレヴァーの肩を、大きな手が叩いた。 「お疲れ、後はこっちでやる」  ゼロスがすれ違いざまにそう言って前に出て行く。それだけで安心して、そのままズザーァッと地面に倒れ込んだトレヴァーは、自分の役目を終えたことに安堵した。
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