第一試合

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★トレヴァー  トレヴァーが目を覚ましたのは、試合が終わって随分たってからだった。草原に寝転がらされているその側に、上官のウルバスがいた。 「ウルバス様!」 「あぁ、起きた? よほど疲れたんだね」  穏やかかつ爽やかな笑顔で言われると、少し恥ずかしい。 「あれ? そういえば、他の奴は…」 「あぁ、給水場。流石に一試合の負担が大きそうだったから、間に三十分の休憩を入れる事にしたんだ」 「そうですか」  色々迷惑かけたのかな? そんな思いがあって申し訳なく俯くと、その頭にふわっとおおきな手が乗って、ポンポンと撫でられた。 「あの…」 「あいつらについて行くのは、大変だろ?」 「え?」 「俺もさ、大変だなって思ったんだ。他の師団長は凄いのばかりだからさ」  その気持ちはよく分かった。トレヴァーはなんて言っていいのか分からない。言葉がないまましばらく黙ってしまうと、ウルバスが続けた。 「でもさ、俺にしかできない事もある。武力じゃない方法でもさ、いいんだって思える」 「武力じゃない方法、ですか?」 「お前は人の間を垣根無しに渡れる。いい意味で空気を読まないからな」 「それ、褒めてます?」 「褒めてるよ?」  大真面目な表情で返されると疑う余地がない。そしてこんな上官なんだ、他意も悪意もない。 「他が牽制して声をかけなかったランバートに声をかけて、戸惑ってるコナンを引っ張ってきた。そうして、まったく面識のない人を繋ぐことができる。それだって、十分大事で他にはできない事だよ」  褒められ慣れていない顔が火照って熱くなっていく。そして少しだけ、自分に「よくやった」と言ってやれた。  少し遠くから手を振って近づいてくる仲間達を見て、トレヴァーは太陽のように笑う。そこにはもう憂いなんて何も残っていなかった。
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