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不戦勝
「トレヴァー、もう大丈夫なのか?」
ぐっすり眠っていたトレヴァーに声をかけると、いつも通りの明るい笑みが返ってくる。これだけで大丈夫だと思えるから凄い。
「次の俺たちの相手、随分時間かかってるな」
レイバンが気のない様子でそんな事を言う。確かに時間がかかっている。何かトラブルでもあったのだろうか。
その時、遠くから聞き覚えのある声が響いてきた。
「通して!」
「エリオット様?」
ランバートが近づくのに従って、他の面々もあとから付いてくる。そうしていくと、複数の簡易担架が連なってきているのが見えた。
「どうしたんですか!」
思わず声を上げたランバートに、エリオットは厳しい顔をした。
「怪我人が多数出たんだ。どうやら落ちていた木の枝を使って無差別に襲った馬鹿がいたみたいで、そいつの被害にあった隊員だ」
腕やら足やらを押さえて蹲る仲間達を見ていると、胸の奥に暗い炎が燃える。ランバートは極力見ないようにして、エリオットに向き合う。その横を、担架が通り過ぎていった。
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