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レイバンが首を傾げる。だがその目は意外と活き活きしている。思わぬ不戦勝で機嫌が悪くなったから、他で誤魔化そうって魂胆だろう。
ボリスは思い出して、少し言葉を詰まらせる。なんて言えばいいか、迷っているようだった。
「とにかく、話が通じなかった。目がどこか虚ろで、何かを呟いていたかと思えば突然叫んだりして。後は、すごい力だった」
その話に、ランバートは背筋が寒くなった。心の中では「まさか」という思いがある。そしてそれをここで言うのは躊躇われた。
「なんか、ストレスとか?」
「いや、そうじゃないと思う。相手も同じ第一師団で、顔は知っていた。大人しい奴だし、違反とかしたことないと思うんだ。だから、アシュレー様もとても困惑していて」
「そいつ、今どこにいるんだ?」
ランバートは聞いてみた。直接見ないと分からないけれど、もしも胸の中にあるモノが当たっているなら、色々と問題がある。
「拘置されて、宿舎の牢に連れて行かれた。ファウスト様達もいたな」
「そうか、有り難う」
ボリスはそれで去って行った。怪我をした仲間の所に向かうのだという。「お前らが勝てよ」という激励を貰い、ランバートは怖い顔で歩き出そうとしていた。
「一人で行くわけ?」
「…胸くそ悪いモノ見るぞ」
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