不戦勝

6/9
前へ
/131ページ
次へ
 そこにはファウストとアシュレーの姿があった。二人とも難しい、困惑した顔をしている。 「ファウスト様」 「あぁ、お前か。聞いたか?」 「はい。少し、遠くから見てもいいですか?」  率直に言うと、やっぱり嫌な顔をされた。だが、たいした抵抗はされなかった。  外扉を開けると、中には五つの狭い個室があってそれぞれ格子がはめられている。更にそこと外扉との間に格子がはまっているという、厳重なものだった。  その中に彼はいた。全身ボロボロに傷ついているはずなのに、笑ったり叫んだりしている。言葉も呂律が回っていないし、目は虚ろで焦点が合っていない。 「これは…」 「こいつ、腕折れてるんだよね? 大丈夫?」 「大丈夫じゃないはずだ」  だがこれで確信が得られた。ランバートは拘置牢から外に出る。そして、厳しい目を向ける二人の上官を真っ直ぐに見た。 「暗府にお願いして、こいつの荷物や部屋を探ってください。後、試合前後の行動も聞き込んだ方がいいと思います」 「原因は?」 「おそらく薬です。しかも、かなりの粗悪品」 「薬?」  アシュレーは心底驚いた顔をしている。それはゼロスとレイバンも同じだった。     
/131ページ

最初のコメントを投稿しよう!

585人が本棚に入れています
本棚に追加