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そこにはファウストとアシュレーの姿があった。二人とも難しい、困惑した顔をしている。
「ファウスト様」
「あぁ、お前か。聞いたか?」
「はい。少し、遠くから見てもいいですか?」
率直に言うと、やっぱり嫌な顔をされた。だが、たいした抵抗はされなかった。
外扉を開けると、中には五つの狭い個室があってそれぞれ格子がはめられている。更にそこと外扉との間に格子がはまっているという、厳重なものだった。
その中に彼はいた。全身ボロボロに傷ついているはずなのに、笑ったり叫んだりしている。言葉も呂律が回っていないし、目は虚ろで焦点が合っていない。
「これは…」
「こいつ、腕折れてるんだよね? 大丈夫?」
「大丈夫じゃないはずだ」
だがこれで確信が得られた。ランバートは拘置牢から外に出る。そして、厳しい目を向ける二人の上官を真っ直ぐに見た。
「暗府にお願いして、こいつの荷物や部屋を探ってください。後、試合前後の行動も聞き込んだ方がいいと思います」
「原因は?」
「おそらく薬です。しかも、かなりの粗悪品」
「薬?」
アシュレーは心底驚いた顔をしている。それはゼロスとレイバンも同じだった。
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