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だが、ランバートは確信を持って言えた。前に、下町がまだスラムだった時に見た光景がダブってみえた。
「植物の中には、幻覚や幻聴を引き起こすものがあります。そうした物を摂取すると、一時的に幻覚を見たり幻聴を聞いたりするんです。脳に働きかけるせいか、力の抑制もできなくなるらしくて。痛みも、感じづらいそうです」
「そんな物があるのか?」
「昔から下町では時々あったんですが、中毒にもなるんです。だから今では商業ギルドがそれらの取引を禁じています」
「つまりこいつは、どこかでそういう作用のある植物を摂取したか、薬を服用した可能性があるんだな」
ファウストの冷静な言葉に、ランバートは頷く。
「植物だと言うなら、どんな物だい?」
「分からずに植物を口にしたとすれば、キノコの可能性が高いです」
「分かった。ファウスト様、俺はオリヴァーに協力してもらって、彼らのいたフィールド内を確かめます。そのフィールドは閉鎖いたします」
「分かった。俺はクラウルに話してそれらしい話がないか聞き込みをする。ついでに、こいつの部屋も確かめてくる」
上官達が行動を確認して動いて行くのを見て、ランバートはファウストに付こうとした。だが、ファウストはそれをやんわりと止めた。
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