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★ランバート
その後、試合終了のベルが鳴るまでランバートは誰とも遭遇しなかった。しょうがなく戻ってくると、審判席にはレイバンの他にゼロスの姿もあった。
「ゼロス、大丈夫か?」
「あぁ、怪我はないんだが。面目ない、取られてしまって」
「いや、それはいいんだ。レイバンは大丈夫なのか?」
「平気。少し強めに当たったけれど、骨とか内臓に響くような怪我じゃないって。湿布貼って貰ったら臭いがさ。自分の臭いで鼻が曲がりそう」
嫌そうにそんな事を言うレイバンに笑って、ランバートは相手チームにも目を向ける。
ふて腐れたトビーと、それを励ますチェスターはいる。だがドゥーガルドの姿はない。けっこう派手にやってしまったから、まだ意識が戻らないのかもしれない。
目に見えた瞬間、冷静さが飛んでいた。だから、加減のタイミングが遅れてしまった。思い切り助走してからの回し蹴りだ、首がいかれてもおかしくない。
これが原因で何かしらの障害が残ったら、彼はどうなるのか。それを考えると、今更ながら怖くなってくる。
不意に手を引かれた。レイバンが苦笑している。
「あいつ、頑丈なのだけが取り柄だからさ。心配しなくても、直ぐに戻ってくるって」
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