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昇級試験(ファウスト)
頃は三月の始まり。雪は姿を消して春の日差しも日によっては注ぐようになった。
ファウストは一人執務室で唸っていた。その前には一年目の評価書が散らばっている。上官である師団長から、一年を通しての長所や短所が書き込まれたものだ。
これを見ると、概ね今の一年目はできがいい。中には問題のある者もいるが、志には問題がない。少し威勢が良すぎるのだろう。
なぜこんな物を見て溜息をついているかと言うと、これらを元に昇級試験を行う事になっているからだった。
昇級試験は一年目を対象として行われる。
一年目はまだ能力にばらつきがあり、普段の勤務態度などでは判断が難しい。それに、最初の所属が日を経た事で合わなくなってきている可能性もある。それらを見て、正しい階級をつけてやるのが昇級試験だ。
例年であれば武を競わせている。剣や槍、弓、体術などだ。
だが、今年はそれが少し難しい。それがファウストを悩ませている。
ファウストの手にはとある一人の評価書がある。それを見ると溜息と共に、自身への反省が募った。
「なんじゃ、まだ悩んでおったのか」
「おわぁ!」
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