4 燃え逝く躰

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短い息継(ブレス)の間に零れる小さな「ぁ」をいくつ吐き出しただろうか。 長やかに費やされる唇の戯れは女の(さが)をこれでもかと引き出してゆく。 唾液を飲み込む細い音が自分の咥内(くちのなか)を伝い、直接響くことにウネる(みち)がまだ空洞にもかかわらず何かを締め上げるように勝手に擦り合わせてきゅうきゅうと静かな音をたてた。 舌先は互いを牽制し合い、吸い取られそうになる前に退()き、また入り込んで暴れる。 ヤワヤワと動く掌が、髪を弄び後頭部を愛撫する。 浸透するジクジクは水面を擽る波紋のように増殖(ふえ)、頭の芯を溶かそうとしているみたいだった。 乱れた息を調える間もなく後藤田様が後ろからわたしを包んだ。 その間も見事に離れることのない (くちびる)(カラダ)。 左脚を伸ばしたそのままでわたしはすっぽりと抱えられ、広く逞しい胸に背中を預けた。 その途端に自分で支えていた腰骨から、ふ、と 力が抜ける。 肌触りのいい、モコモコとした部屋着のパーカーはファスナーがあれよという間に下げられ胸元にチュールを施したキャミソールの上から抱き締められた。 頭の後ろにあった筈の掌はもうわたしの鎖骨あたりにいて、親指が窪みに掛けられている。 前腕と肘で潰された乳房が微かに疼いた。 正確に言うと、疼いたのはもう尖り始めている乳首だ。 チュルチュルと下唇を吸われて、やっと口付けにピリオドが着く。 首筋にそれを移し、そこにかかった呼気(れつじょう)とも取れる熱がわたしを酷く支配した。 暫くそこで埋もれ 血を啜って獲物を絶命させた獣が やっとひと息ついたみたいに、ゆっくり顔を上げた。
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