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「と、まぁ、戯れはこの辺にして」
「……はっ」
「そろそろ三十分だな」
バクバクと刻む心臓をきっと掌で感じている筈の後藤田様は、惜しげも無くスルリとわたしの身体から手を引いた。
え、と思って見た自分の姿にとりとめのない恥ずかしさが襲いかかってくる。
‘淫らな’って、きっとこういうことを言うんだ。
コンビニの成人雑誌区域に並ぶ
見た目、100%男子のオカズにされてしまいそうな画を晒していたからだ。
慌てて身体を起こし、下がってしまったキャミを元の位置に戻した。
「オレの理性もなかなかやるだろ」
ふふ、と鼻息を荒くした後藤田様はわたしの脚首の方へ移動して氷を外し、固定用の伸縮包帯を自分の掌の上でクルクルと巻く。
シーネを添えた脚首の踵から包帯を巻き始め、あっという間にそこを固定した。
その一連の流れのソツの無さにちょっと見入ってしまう。
「寝返りしたら緩むかもな……緩んだら……」
視線を患部に集中させ何かを考えるような物言いにわたしは首を傾げた。
さっきの湿布のことといい
包帯の巻き方といい
なんでこんなに手馴れてるんだろう、と。
「ま、酷い痛みは2、3日だろ」
瞼が上がり、視線がわたしの顔に辿り着いた瞬間に眩いばかりの微笑みが向けられた。
今の今まで、卑猥極まりないオーラを醸し
わたしを弄んでいた後藤田様の爽やかな変わり身に思わず瞬きが増えてしまう。
「さ、もう寝ろ」
ぽん、と頭のてっぺんに掌を伸ばしてわたしを労った後藤田様が差し出した手を取ると
引かれて難なく立ち上がることが出来た。
窓の側の広い広いベッドに沈むとそこに置かれたいくつもの枕のうちの一つをわたしの左脚首の下に充て
「ゆっくり寝て?」
緩やかに紡ぐ。
「はい」
そのスピードに呼応するように、瞼を、一度閉じながら頷いた。
「胡蝶……」
優しく色付いた声を聞いて、さっきまでの触れ合いが蘇り、皮膚の直ぐ下がザワザワとする。
二人を包む空気が、しっとりと艶を纏った。
筈なのに……
「胡蝶、お前、パンツ替えなくていいのか?」
「はあ!!??」
「だって、ぐっちょぐ「もう!なんてこと言うんですか!!」
そのデリカシーの欠けらも無いセリフを真顔で淡々と吐き出した後藤田様に枕を投げつけた。
あははは、と軽く笑って
おやすみー、と後ろ手を振った後藤田様の
イメージが大きく音をたて崩れた。
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