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考え出したらキリがない。
あれほどの美貌と才能が混在した男だ。
女性の影がないはずは無い。
あからさまに大袈裟に首を振って与えられた自室に入った。
いつもなら、リビングでずっと過ごし
ハウスキーパーの用意してくれた昼と夜のご飯をいただき、そして眠る。
朝、起きてくると出勤前の後藤田様に会えた。
この二日の全ての出来事だ。
脚をなるべく動かさないで、と言われた通りにしていたから、暇を通り越したド暇を過ごしていたんだ。
そして
ポケットの中に入れたスマホがブルブルとふるえた。
一日に二回、連絡が入るようになった黒いスマホを迷いなく取り出し、まだ立ったままの姿勢でラインを開いた。
「あ……」
直ぐに返信をする。
多分、わたしのレスが来ることを見越していたのか同時に既読マークがついた。
“下にいる。悪いけど下まで降りてきてって伝えてもらえる?”
下、と言われてピンと来なかった。
“一階ですか?”
“そう。悪いな”
後藤田様は、来客?が来たことをご存知なようだ。
それならこんな手間をかけずご自分でいらっしゃればいいでしょう。
苛立ちを表しながらプクリと膨らんだ両頬に加え下唇が勝手に突き出た。
とは、言ってもそんなこと面と向かって言えるわけでもないし
リビングにいる女とはかかわりたくないのに
仕方ない、と大きく息を吐き出し
Uターンを決めて部屋を出た。
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