3

3/4
176人が本棚に入れています
本棚に追加
/58ページ
「…なんだよ?」 「あそこって、お化けが出るんだぜ?」 「はぁ?」 「お・ば・け!だから、みんな気味悪がって近寄らないんだ」 ――たしかに、バケモノが出そうだ。  バケモノどころか、キツネやタヌキその他諸々が(こぞ)って出そうだ。 (とりあえず、鬼婆はいたな)  嘆息しながら、佐々木は口を開く。 「…それで?お前は御親切に忠告しに来たのか?」 「え?」 「どこの店も閉まっているし、もう暗いじゃないか?ここはバス通りからも外れているし、住宅街からも反対方向だ。通りすがりに偶然声を掛けたっていうなら、ちょっとムリがあるぜ?」  多分、この少年は、佐々木が旅館を出てくるタイミングを見計らって、声を掛けたに違いない。  偶然ではなく、明確な意思をもって佐々木へ接触したのだ。 (ちょっと、こういう洞察力を働かせるところってば所長っぽくないか?)  そう思うと、何となく、佐々木は得意げになる。 「お前、わざわざオレにお化けの話を聞かせたくて、こんな寒空にオレの後を付けていたのか?」 「うっ…」  佐々木の指摘に、少年は見ていて分かるくらいに動揺した。 「いや、オレは――…先輩が、旧館にどっかの旅行者が迷い込んだみたいだから、教えてやれって命令されただけで…」 「ほぉ?」  口角をクッと上げ、佐々木はニッコリと笑う。 「ずいぶん親切な先輩だな?ここいらの高校生は、みんなそうなのか?」 「うっ…うるせぇ!とにかく、あそこは幽霊屋敷で有名なんだ!早く出て行けよ!!」  佐々木の追及に、たまらず、少年は早々に引き上げる事にしたらしい。  突如声を荒げると、そう言い捨ててパッと逃げるように走っていった。
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!