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当然の抗議に、雅也もムッとして言い返してきた。
「だって、あそこはお化けが出るんだよ!」
「……はぁ?」
「だから、お化けが出んの!翔太から、オレの伝言聞いたんじゃないのか?」
「―――…え?」
思いもよらぬ雅也のセリフに、佐々木は固まった。
たしかに、あの頭の悪そうな金髪少年、翔太がそんな事を言っていた。
だが、それはあくまで、佐々木たちを追い出そうとする方便ではなかったのか?
「まさか――冗談だろう?」
思わず、強張った声をもらした佐々木に、雅也はブンブンと首を振った。
「いや、マジで」
彼はアッサリと答えると、続けて言った。
「あそこの部屋は、絹江っていう名前の、昔の女将が幽霊になって出てくるって有名なんだ。さすがに不気味で、あの部屋でSEXなんてムリだって!」
「…」
「その幽霊が憑いているから、母さんが何度も旧館を潰そうとするその度に、邪魔が入るんだろうなぁ~…アンタらみたいな客が、ひょこっと泊まったりするし?」
「…」
「そうそう、向こうのピカピカの新館は、大手に高値で売却する方針だってさ。その方向で、親父が銀行と話を詰めているって。今度はそれを元手に、この旧館を改築して続けていくって言ってた!跡取りのオレが東京に行っちまうし、もうあんな大規模リゾートホテルは手放すって。最近は、逆に新館が首を絞めている状態だったみたいで、さすがの母さんも同意したようだ……昨日の脅しが効いたってのもあるみたいだけど?」
雅也はそう言うと、クルリと踵を返した。
その視線の先には、手を振って近寄ってくる少年がいた。
「せんぱ―――っい♪」
「そこで待ってろ、翔太!今行くっ」
明るいトーンで雅也は声を上げると、最後にチラリと、固まったままの佐々木に視線を投げた。
そして、彼なりに気を利かせたらしい一言を、佐々木へ送る。
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