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「じゃあな、お前も頑張れよ!」
晴天の下、若い高校生たちは青春を謳歌しに去って行った。
◇
「…どうした?佐々木?」
「――いえ、もう…何だか、本当に――…」
深い溜め息を吐き、佐々木はグッタリと助手席のシートに沈み込む。
散々振り回されて、本当に疲れた。
高校生と幽霊は、もう当分係わり合いになりたくない。
車外から、綾瀬はそんな佐々木に、気遣うような声を掛ける。
「――最後は、お前も日本酒をけっこうな勢いで呷ってたからなぁ…さては酒が残ったか?『冷酒と親の説教は後から来る』って言葉があるくらいだ。調子に乗って飲むと、そんな風にあとで後悔する事になるんだぞ?」
「はいはい」
おざなりの返事に訝し気に眉を寄せるも、綾瀬はそれ以上何も言わずに、駐車場に立ったままタバコを取り出し、口に咥えて火を点けた。
「フゥ~…」
美味そうに一服する様子を横目に、ふと佐々木は気付く。
(そういえば……所長は、この旅行で喫煙する場合――オレの近くでは吸っていないな?SAとか、こんな風に開けた場所でもない限り――…)
運転中、隣の助手席に佐々木が乗っていた間、綾瀬は一度もタバコを口にしていない。
ヘビースモーカーなのに?
よく考えてみれば、不思議だ。
出会った当初、密室だろうと何だろうとお構いなしに吸っていた頃を思えば、信じられない出来事ではなかろうか。
意識しているのか無意識なのかは分からないが、綾瀬は確実に佐々木を思いやっている…のか?
(ふぅ~ん…成程ねぇ……まぁ、今はそれで充分か――…)
「――何だ?」
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