それから一年が過ぎて。

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有紀 4月2日 代休の日、久しぶりに東区にある実家へ行った。 春休みなので、両親も遥香も駿太も家にいた。 「シュークリーム買ってきたよ~。このお店のシュークリームとっても美味しいの~!」 本当はショートケーキを買いたかったけれど、あまりに高いので節約したのだった。 それでも、妹の遥香が「わーい!」と言って喜んでくれた。 遼介と二人で働いていても、なぜだか不安で節約グセが抜けない。 「ねぇ、赤ちゃんまだなの?」 早く孫の顔が見たい母は、言ってはいけないセリフを遠慮もせずに平気で口にする。 「そういうプレッシャーを与えちゃいけないって、いつも言ってるでしょ!」 実家に帰ってきた早々に不快な気分にさせられる。 「だって、もう結婚してから一年半も過ぎてるでしょ。一度、婦人科へ行ってみたらどう?」 「そんなに慌てることないでしょ。私だって遼介だって、まだ若いんだから。余計なお世話なんだってば!」 「いつまで若い気でいるんだか。遼介さんだって、今年は三十でしょう?」 「男なんて六十過ぎてもパパになってるじゃないの。三十なんてまだ若いわよ」 買ってきたシュークリームをムシャムシャと食べる。 「美味しい~!」 しばらくダイエットをサボっていたら、やはり太ってきて、このままだともうすぐに60㎏の大台に乗りそう。 遥香も大学を卒業して、今は市内の銀行に勤めている。 未だに合コンが趣味なのに、彼氏はいなさそう。遥香は条件高過ぎなんだって! 弟の健太は大学の二年生だったかな? 一応、彼女が出来たらしい。中々、可愛らしい子で家にも連れて来るのだそうだが、私はまだ会ったことがない。 実家でくつろぎ、家族と夕食まで食べてから、発寒のアパートへ帰ったけれど、遼介はまだ帰宅していなかった。 大体いつでも10時過ぎでなければ帰らない。 こんなハードな仕事など、辞めたらいいのにと思ってしまうけれど、失業して家でブラブラされるのも嫌で言えずにいる。 疲れて帰ってきている遼介に、早く子供を作りたいなんて言えるわけないでしょ。
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