それから一年が過ぎて。

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遼介 3月25日 この宅配の仕事を始めて、早いものでもう、一年になろうとしている。 放射線技師の求人を探していなかったわけではなかったが、この仕事をしていながら、そんな暇を見つけることは容易ではない。 とにかく再配達が多くて、うんざりする。なので朝の早くから仕事をしても結局、皆が帰宅するような時間帯の配達が残ってしまう。 客というものは我儘だ。平気で再配達をさせるくせに、こちらが指定時間に少しでも遅れると、すごい剣幕で怒鳴りつける。 「朝から、ずっと待ってたんだぞ。お前のせいで、今日の予定が台無しだ。どうしてくれるんだ!」などと、散々な悪態をつかれる。 荷物よりも、人をいたぶるために待っていたのではないかと思われるほどだ。 平謝りで、早くクレームが終わってくれるのを祈りながら、次の配達までも間に合わなくなりそうで、気が気でなくなる。 こういうクレーマーという輩に比べたら、あの陰険だった医師でさえも、懐かしく感じられるほどだ。 肉体的にもつらい上に、そんなクレーマーからの苦情対応で、精神的にも追い詰められる。 伝票の整理などをすませて、疲れきって家に帰ったら、有紀が四月から主任に昇進したと自慢した。 有紀の昇進を素直に喜んであげられない自分が情けなく、悲しい。
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