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女の子をこのアパートに入れるのは初めてだ。
「わ~ やっぱり思った通りきれいにしてるね」
と、褒められたけれど、あまり嬉しくなかった。
彩矢ちゃんが好きなタイプは、掃除なんてしない、野生的でものぐさな男なんだろう。
じっと座っていると落ち着かないのか、冷蔵庫を開けたり、あちこちをキョロキョロと見ている。
好奇心旺盛な子供のようにクルクルとよく動く。
リビングのベッドをソファーがわりにしているので、彩矢ちゃんにどこに座らせて良いのかわからない。
ローテーブルに敷かれているラグに、ちょこんとお座りしているけれど、そこで映画を見ていたら足がしびれないかな?
カップスープをふたり分入れると、コンビニで買ってきたおでんや肉まんなどをテーブルにひろげた。
借りてきたDVDをブルーレイディスクにセットした。
彩矢ちゃんの見たいものでいいと言ったら、あまり聞いたこともない邦画のラブコメで、途中で眠くならないか少し心配になる。
どこが面白いのかよくわからないラブコメだったけれど、彩矢ちゃんに付き合ってちゃんと真面目に最後まで見ていた。
途中、ちょっとしたラブシーンがあって、ふたりでこんな場面を見ていると、妙にシーンと静まりかえる。
何気なく飲み込んだ唾の音がゴクリ!とやけに大きく響いて、彩矢ちゃんにクスクスと笑われた。
DVDを見終えると、もう10時だった。
「じゃあ、そろそろ送るよ」
ディスクを取り出して立ち上がった。
久しぶりの外出なのだろうし、この間まで熱を出していたらしいから、病みあがりの体で疲れただろうと思う。
「もうちょっといてもいい? 迷惑かな?」
「迷惑なんてことはないけど、体調もまだ戻ってないんだろう? ご両親も心配しているだろうし」
「優しいんだね。本借りてもいい?」
彩矢ちゃんはそう言うと、本が置かれている、5畳ほどの部屋へ入った。
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