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仕事帰りはもっと最悪だった。まあ、自らが招いた失態だから仕方がないのだけれど。
待ち伏せしていた松田先生のBMWに無理な追い越しをかけられた。それ自体は大したことではないけれど、助手席に座っていた彩矢ちゃんが、怯えたような目で俺を見つめていた。
松田先生は俺の痛いところをちゃんと見抜いていた。俺が未だに彩矢ちゃんが好きで未練を持っていること。どうすれば最高のダメージを与えられるかを知り抜いている。
……もういい。
彩矢ちゃんは。
……本当に疲れた。
3年間勤めた病院に未練がないわけではない。馴れ親しんだ職員たちとの別れはやはり寂しいものを感じる。次の職場だってまだ決まっているわけもない。
でも、このまま病院にいて、これ以上松田先生と彩矢ちゃんの姿を見るのはもう限界だ。
本当に彩矢ちゃんのことはもう忘れよう。 俺が彩矢ちゃんにしてあげられることだって何もないんだから、余計なお世話というものだろう。
それに松田先生を殴っておいて、この病院にいられるわけもない。
明日、辞表を出そう。
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