忘れられなくて

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12月17日 晴 「彩矢に風邪薬を届けてあげたいから、いっしょに行かない?」 と佐野さんを誘った。 うん、わかった、って言ったから、いっしょに家まで行くものと思っていたら、 「いいよ、俺は車で待ってるから」と弱気な顔でうつむいた。 「 もう、 なに怖気付いてんだよっ、行くぞ、オラー!」 と凄みを効かせて言ったけれど、 「いいから、ひとりで行ってくれよ」と困った顔をした。 せっかく佐野さんのために来たのに、会わないで帰っちゃうわけ? プンプンしながら玄関ブザーを鳴らすと、彩矢のお母さんが出て来た。 ひきこもっている娘に、友達が心配して会いに来てくれたことがなによりも嬉しいようで、終始笑顔で感謝された。 彩矢は暗い表情をして二階から降りて来たけれど、もう熱はなくて治ったようだった。 治ったのなら、佐野さんに一目でも会わせてあげたくて、「ちょっとだけ、外に出られない?」と聞いてみた。 生気のない土気色の顔ですかさず、「ごめん、無理」と言われた。 精神的なダメージがまだ続いてるんだな、可哀想に……。 バスで来たの? と聞かれたから、佐野さんの車でと言ったら、私と佐野さんが付き合っていると誤解して、「デートの途中にごめんね」と言った。 デートなわけないじゃん。 佐野さんはまだ彩矢のことが好きみたいよって言ったら、驚いた顔をしていた。
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