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未波は、慌てて頬を両手で拭った。
だが、涙となって溢れてしまった感情は、そう簡単には治まってくれない。
その状況に、更に未波は慌てた。
しかし、やはり勘の良い辻上が、彼女の様子に気付かない訳もなかったようだ。
フッとピアノの音が消えたと思うと、未波の目の前に彼が立った。
そして、やんわりと腕を取られたと思うと、焦る未波を抱き寄せる。
そして、彼女の頭に頬を寄せた彼の声が降ってきた。
「また、泣かせちまったな」
ごめん。
辻上のその一言に、涙を呑み込みたいと思う気持ちとは裏腹に
更に感情が涙になって溢れてくる。
そして、そんな彼女を抱きしめて背中を優しく摩りながら、
降ってくる辻上の声が低く言った。
もう、お前の部屋に行こう。
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