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ねぇ、レイ。
未波は、そっと髪を撫で続ける彼の腕の中から小さく辻上を見上げた。
「ん?」
「いつから、ラウンジでピアノを弾くようになったの?」
ああ……。
相変わらず未波の髪を、ゆっくりと撫でながら辻上の声が呟いた。
「あそこに出向に入って間もなく、ラウンジにピアノがあるのを見付けた。
で、ある時ひどく気が滅入る事があって、
ふと思い出して、週末に休日出勤を装ってラウンジに向かったんだ」
だが、1階のメール室に勤める辻上が、
鍵も開けてもらわずに守衛室の前を去ったことを不思議に思ったらしい。
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