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「じゃあ、あの時も、何か嫌な事があったから弾いてたの?」
尋ねた未波の頭の上で、ピタッと彼の手が止まった。
それで、少し不思議そうになった彼女の目から逃れるように、
彼の視線が少しだけ外れる。
「まぁ……、色んな意味で煮詰まってたっていうかな」
「勉強のこと?」
それも有ったけどな。
言葉尻を濁すようにして消し、辻上は、少しだけ押し黙る。
そして、憮然としたような口調で付け加える。
「その前の金曜に、お前を送って行っただろ。
その時に、無意識で抱き上げちまって以来、
お前の事が、ずっと頭から離れなくなってた」
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