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「じゃあ、気晴らしっていうのは、デートに誘う口実だったの?」
「まぁ、思いがけず、お前と会ったからな。
最初で最後かもしれないチャンスだとは思ったかな」
そして、未波の頭を抱え込むように自分の胸に軽く押し付けた。
「あんまり追い詰めるな。そういうの苦手だって言っただろ」
照れている辻上が妙に可愛くて、未波は、彼の胸に頬を寄せて細く笑った。
それから、顔を上げないままで訊いてみた。
「お腹、空かない?」
うん。
声で頷いた辻上が、何か買ってくるという。
しかし未波は、かぶりを振ると、ゆっくりと顔を上げた。
「今日は、レイに暖かい物を、ちゃんと食べて欲しいの。
だから、そのための食材も準備してあるから」
フッと、淡い笑みに彼の顔が綻んだ。
そして、微笑み返した未波の髪を、笑みを広げてワシャワシャとかき混ぜた。
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