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「今日、泊まっていけるの?」
うん。
相変わらずきれいな箸使いでうどんを平らげていく辻上が、小さく頷いた。
「じゃあ、今夜はナンチャッテじゃなくて、ちゃんとしたお鍋にしようね。
カキを買ってあるから、土手鍋にしようか。それとも、豆乳鍋とかがいい?」
「おま……、未波が好きなほうでいい」
そして、ちょっぴり食べる手を止めて、じっと未波を見つめる。
「時々なら、『お前』って言ってもいいか?」
生真面目に尋ねられ、未波は、思わずクスリと小さく笑った。
「うん。『お前』でも、『おい』でも、『なぁ』でもいいけど、
名前も呼んで欲しい」
うん。
頷いた辻上は、うどんに戻りかけて、上目遣いに未波に視線を戻してニヤリと笑った。
「けど、カキで俺に精つけて、なに企んでんだ?」
バカッ。
未波は、瞬時に顔が赤くなるのを感じつつ、思わず目の前の彼を睨みつける。
そして、逃げるように視線を落としてうどんを口に運ぶ未波の耳に、
フッと柔らかく笑う彼の声が聞こえてきた。
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