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彼らにとってシノブさんの退会は喜ばしいことらしい。
一行が列を作り始めた。何かが始まるのだ。一人所在なく立ちつくしていた。
僕がこの場にいる理由はない。その事に、なぜか寂しさを感じた。
「ジン。道行、だ」
老翁が途切れ途切れ言葉を放つ。赤い舌と歯肉だけが残る口腔は生まれたての動物のようだ。
男は予想通りジンだった。
彼はさっきまでの晴れやかな笑顔と打って変わって鋭い表情になった。
「裏道を歩くつもりか?」
問いかけられて、初めて気がついた。僕は、昨夜の道に行きたいのだ。
「裏道を一度でも歩いた者には通知が届く。日付が変わる前に集合場所に来れば次の町へ案内する。来なければ置いてゆく」
通知とは脳裏にファミレスの映像と位置情報が浮かびあがった現象のことだろうか。
「道行の禁忌は三つだ。裏道を歩いている間は列から離れないこと。列を乱さないこと。同行者に危害を加えないこと。約束を破った時はそれ相応の罰が下されると思いたまえ」
一同は整列していた。全ての視線が僕に集まっている。
「えっと・・・・・・どこまで行くんですか?」
いたたまれなくなって、ジンに話しかけた。
「ソコだ」
其所だろうか。
「物事の極まるところ。果てだな」
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