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「落としても責任とらないからな」
ソマにも二つ持たせた。彼の視線はリュックに釘づけだ。
「行きましょう」
促すと、ソマは「すまねぇ、すまねぇな」と言った。
「すまない」は、僕達への感謝ではない。ここにはいない誰かにカップラーメンを持ち帰れないことを詫びているのだ。
荷物との決別がついたのか、ソマは素早い動作で隙間にすべりこんだ。僕も後に続いた。
横歩きで進むたびにコンクリート塀のざらつきにTシャツの繊維が引っかかる。小柄とはいえ、あずき色ジャージの少女はどうやってリュックを抱きながら通ったのだろう。
カップラーメンを持つ手に力が入る。掌から汗がにじみ出て、フィルム包装に貼りついた。指先が痺れてきた頃に体を圧迫していたコンクリート塀がなくなった。
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