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闇夜に城のような建物が浮かび上がった。瓦屋根に白い壁。柱と欄干は朱い。いつか見たアニメで見た、神様が集まる湯屋に似ている。
ファミレスの駐車場がこんな場所に繋がっているはずがない。建物を見上げ呆然と立ち尽くしていると、後ろから「止まるな!」と怒鳴られた。
数メートル先でカップラーメンを持った男がこちらを窺っている。ソマだ。
裏道を歩いている間は列から離れてはいけないという言葉を思い出しソマを追った。
道の両脇には屋台が並んでいる。薬膳というのだろうか。漢方薬を連想させるスパイスの香りがただよってくる。急激に食欲が湧いてきた。屋台を盗み見すると、大皿に肉まんが山盛りになっている。
「裏道のものは食べてはいけない」
背後からの女性の声に、食べ物に目が釘づけになっていたことに気がついた。
屋台には若い人、年寄り、子供。男も女もいた。そして、角が生えている人や牛頭の人もいた。
冷たい風が頬をなでた。
眼下に大きな川が流れている。
対岸の景色は見慣れた日本の街並みだ。背後は斜面で、下った先に隙間なく建物が並んでいる。日本の都市部の風景だ。
僕は堤防の上にいた。
「夜が明けました」
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