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砂利道が麓に向けてまっすぐ延びている。両脇の斜面は段々畑のようになっており、青い三角屋根の平屋がコピペしたように連なっている。
ぬるい水の中を歩いているような湿気はなく、空気がからりとしていた。肌寒く、両手を交差させ腕をさすった。
「また夜に」
ジンが散会の言葉を放つ。
スマホで現在地を調べると北海道だった。
「ここ、どこかわかる?」
モデル男に話しかけられた。
「北海道みたいです」
「どうりで冷えると思った」
半袖Tシャツ一枚ではこらえられそうにない。背中を丸めて小刻みに足踏みをしていると、男は手にした紙袋からダークグレーのジャケットを取り出した。
「着るといい」
助かったとジャケットを羽織った。驚くほど軽い。肌触りがよく、体にフィットするとはこういうことかと関心した。袖口に値札がついていた。三万、いや三十万だ。
目を剥くと男は笑って「デニムにも合わせられるから使いやすい。あげるよ」と言った。
「や、でもこれ・・・・・・」
おいそれと受け取っていいものではない。
「便利だよねぇ」
男がスマホの画面をのぞき込む。
「僕が裏道を歩きだした頃は、こんな便利な物なかった」
「あの・・・・・・」
ジャケットから話がそれていく。
「岩下だ」
尋ねたわけではないのに名乗られた。
「近くに店はありそう?」
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