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岩下と須田から離れ坂を上った。
坂の頂から青い屋根を見下ろした。そろそろ人が動き始めてもいい時刻だが、その気配はない。
時折風が吹き、葉ずれの音が波のように寄せては返す。風が止まると音なき音が耳を刺す。
青い屋根の団地と反対側にも道が延びている。気づけばつづら折りの道を下りていた。
体は疲れていたが、頭はやけに冴えていた。徹夜明けのハイテンションに近いものがある。
歩いている間は足を交互に動かすだけでいい。
そうしていればいいという状態は心を軽くしてくれた。
潮の匂いがした。
どぉぉん・・・・・・ざざ、ざざざ。
波が岩にぶつかる音がした。耳を澄ませると、潮騒が聞こえる。
坂を下り終えると、砂礫と岩の入り交じった浜に出た。水は碧く透明で、水底に沈む石がくっきり見える。歩くと、玉砂利を踏むような音がした。
海沿いに進むと切り立った崖に抱かれるようにお堂が建っていた。目にした瞬間、竜宮城だと思った。
石でできたかまくらの上に小さなお堂が乗っている。お堂の柱と欄干は朱い。
かまくらの穴には格子戸がついていた。
近づき、格子に手をかけると戸は内側にあっけなく開いた。
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