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 ねっとりとした声が絡みついてくる。 「そんなことないですよ」 「ふーん」という気のない返事で会話が途切れた。  一行は無言で歩いている。  胸に不安がこみあげてきた。アパートから徒歩十分で国道に出られるはずなのに、その気配が全くない。火葬場と隣家の間がこんなに長いはずがない。見回すと街灯も民家の明かりもなく、塗りつぶしたように真っ暗だ。立ち止まって見上げると星一つない。どんなに目を凝らしても闇が広がるばかり。 「足を止めないで。歌声を追って」  すずやかな鈴の音のような声がした。いつの間にか一行が彼方にある。  星よりひそかに  雨よりやさしく  あの娘はいつも歌ってる  懐かしの名曲番組で必ず流れる曲だ。  歌声は調子っぱずれでやたら元気がいい。  姪の茉莉を思い出した。幼稚園児はリズムも音程も考えない。歌うことが楽しければいい―あの歌唱にそっくりだ。  闇に包まれているのに目が見えるのは、地面を踏み締めるとほのかに光るからだ。足が離れると、道はすっと闇に消える。  息が上がるほどの早さで走り一行に追いついた。最後尾のリクルートスーツの女性はひたすら足を動かしている。急ぎ足で歩き続けて疲れないのだろうかと足下を窺うと、スニーカーを履いていた。     
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