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「ぼうやは眠りましたか?」
いつの間にか隣に黒ジャージの男がいた。
男の向こう側には黒髪を束ねた女性がいた。
遠目で見かけたのでリュックを抱いているものだと思ったが、彼女が前抱きしていたのは赤ちゃんだった。確か、だっこ紐という道具だ。茉莉が赤ちゃんだった頃に姉が使っていた。
黒ジャージの男と赤ちゃんを抱いた女性が歩みを止めた。つられて足を止める。
列が遠ざかってゆく。数人が踏み締め放った光が失われると、それぞれの足下から立ち上る淡い光のみが頼りになった。
闇に、赤ちゃんの寝息が吸い込まれてゆく。
「君はどこへ行く途中だい?」
いきなり話しかけられた。
一行に空気のように扱われていたので、ごく普通に話しかけられ驚いた。
「コンビニに行く途中だったんですが迷ってしまって・・・・・・」
「ちょうどいい。シノブさんを送ってもらえないか」
男が彼方を指さした。見ると、ほんの数メートル先に見覚えのある国道があった。
「彼女の家は国道沿いの高層マンションだ。コンビニにも近い。頼んだよ」
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