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それは土曜日の朝、同居人の不思議な発言から始まった。
「おいしい小説特集に俺が取り上げられなかったのを悔いて、今日はお料理番組の様に朝食を作ります」
いや、おいしい小説特集ってなんだよ。
「先ずは、こちら」
銀色のバットをダイニングテーブルに乗せる同居人。バットには、パック入りの鶏肉やうどん、もやしが乗せられていた。
「鶏肉を袋に入れ、狂った塩を振りかけます。軽く揉んでから密閉し、味が染み込むまで冷蔵庫で放置します」
それを実践する櫻井。染み込むまでの基準を言わなくて良いのか。
「そうして放置しておいたものがこちらです」
料理番組あるある来たな。塩で水分を細胞から奪われた鶏肉が、薄茶色い汁に浸かっている。
「これを耐熱容器にだばあっと移し、ふんわりラップをかけて電子レンジで二分」
電子レンジに鶏肉入りタッパーを入れ、スイッチを入れる櫻井。バットを抱え、目線で付いて来いと言ってきた。
「その間に湯を沸かし、もやしを洗っておきます。ひげを捨てるのはエコじゃないので、わざわざとる必要はありません」
櫻井は、電気ポットから鍋に湯を注ぎ、加熱も始めた。もやしは、雑に水洗いされた後で、笊ごとバットに乗せられる。
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