1人が本棚に入れています
本棚に追加
ぼくには血のつながりがある家族がいない。
きっと、お父さんは、ぼくが覚えているとは思っていないはず、だ。まだ1歳半のときに、ぼくはお父さんに拾われたのだから。
ぼくの本当の父と母がどこにいってしまったのかまではさすがにわからないが、寒い寒い箱の中で蹲っていた僕を拾い上げ、涙したお父さんの顔はよく覚えている。
そして、多分本当の母と思われる女の人が、ぼくをあの寒い寒い箱に入れたことも。ごめんね、と言った声は、ぼくのあたらしいお母さんよりも低い声で掠れていた。
ぼくはすべて、覚えている。
最初のコメントを投稿しよう!