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「ねえ、ピザって10回言って?」
にっこりと笑ってそう言う彼女はどこか楽しそうだけど、なんで急にこんなこと言い出したのか。
「ほら、早く」
急かされたので仕方なく「ピザピザ……」と10回言ってみる。その後に待ってるセリフはと言えば…
「じゃあここは?」
人差し指で示されたそこは勿論「ひじ」な訳で。
「ひじ」
少しも迷うことなくそう答えるとみるみる突き出される唇。そんな顔しなくても……と若干苦笑いを浮かべつつも「凛ちゃんつまんないー」なんて言い出した彼女に理由を問う。
「急にどうしたの、ん?」
頭を軽く撫でてあげるけど、むくれた顔は直らない。その顔も可愛いけどねぇ。
「今日、ピザの日なんだって」
ピザの日……
あー、なるほど。
「でも、なんで10回クイズなの」
頭を撫でたまま聞いてみると無言で視線が泳ぎ出す。
「……ピザの日なんだーって思ってなんか最初に出てきたのがこれだったんだもん」
むくれ顔にやや照れが混じって、頬に赤みが加わる。「ピザの日」を彼女なりに楽しもうと思った結果、ちょっと恥ずかしいことになってしまったのだと、その顔から読み取れる。
そんな彼女も愛しいと思ってしまう自分も自分か。
「そっか。今日はピザの日なのかぁ」
店にピザ生地余ってたよなぁ、とか段取りを考えながら突き出た彼女の唇にキスをする。
「じゃあ今日の夕飯はピザにしようか」
そう言って彼女に笑いかければ一気に彼女の顔が明るくなる。
「やった!じゃあお気に入りのワイン開けていいっ?」
「いいよ」
さっきまでの彼女はどこへやら、美味しいピザとお気に入りのワインの夕食に期待を踊らせるとても可愛らしい彼女。
1枚は彼女のお気に入りのトッピングにしてあげよう、そう決めた。
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