溢れる

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「すき」 「好き……」 「大好き」 私の彼女は普段から気持ちを伝えてくれる人なのだけど、たまに溢れ出るように「好き」だと言ってくる時がある。 それは主に仕事などで何かがあった時だったりするんだけど……。 「すき……」 背中から抱き着かれて、つむじや項にちゅ、ちゅ、とキスされる。 「好きなの……」 そのままぎゅーっと強く抱きしめられる。 また何かあったんだな、と思いながら「私も好きだよ」と頭を撫でてあげる。 「すき……」 「うん、知ってる」 「好きよ」 「わたしも」 「すき……」 ……これは、今回は結構キテるのかな? 好きだと言われるのは嬉しいけど、あんまり言われすぎるのもやっぱり照れくさいというか。 放って置いたらいつまででも言いそうな勢いだし、そろそろその口塞いでおこうかな。 彼女もそれを待ってるのを知ってる。 抱き着かれている手を解いて、体の向きを変える。両手を軽く広げて「おいで」と言えば、彼女の瞳が揺れるのが見えた。 「好きだよ」 どんな時でもそばに居るから。不安にならないで。 とりあえず今は、彼女の期待に答えることにしよ。 その唇に、ありったけの愛情を込めたキスを。
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