1122

1/4
前へ
/490ページ
次へ

1122

「いらっしゃいませ、真田さん」 朝9時のOPENに合わせてドアが開く。入ってきたのは年配のご夫婦で、毎日のように来て下さる常連さんだ。 「おはよう。凛ちゃん」 にっこりと朝の挨拶をしてくれる奥さんに、会釈だけだけどにこやかな旦那さん。 旦那さんはリタイア後すぐに大病を患い、左半身が少し不自由なのであまり話さない。毎日のリハビリがてらここまで通ってくれている、と前に奥さんが話してくれた。 「寒くなりましたね」 11月も半分が過ぎ、天気予報のお姉さんも屋外で大変だな、なんて思う季節。もう冬はすぐそこだ。 「そうなのよ。寒くなると私もこの人も関節が痛んでたまらないわ」 歳はとりたくないわねぇ、なんてさも可笑しそうに言う奥さんはとても可愛らしい人だ。でも実際、冷え込んでくると身体のあちこちが痛むんだろうな。うちのおばあちゃんも同じこと言ってたし。 「こちらへどうぞ」 と、いつもの指定席へご案内する。 窓際の二人席。ゆったりとしたソファー席に、旦那さん用に少し固めのクッションを置いてある。 そこで、奥さんは紅茶を、旦那さんはコーヒーをのんびりと楽しむ。     
/490ページ

最初のコメントを投稿しよう!

195人が本棚に入れています
本棚に追加